会報誌114号 「ウサギ年に跳ねる」 寄稿:稲玉 弘さん

ウ サ ギ 年 に 跳 ね る   稲 玉   弘(千曲市 平成21年6月退職)

明けましておめでとうございます。私はNTTを退職し今年で14年、故郷での生活は11年になります。

NTT退職後TOSYS、炭平コンピューターシステムにお世話になり2021年にサラリーマン生活を卒業して現在に至っています。

毎日の時間がゆっくり流れる生活にも慣れましたので、近況や感じていることなど徒然に書きたいと思います。

 

《定年帰農》    

故郷で暮らし始めてから会社勤めの傍ら近くの畑で野菜作りや僅かな杏畑で杏の収穫をしてきましたが、勤めを辞めたので「農」の比重を増やしています。

色々な機会に書く職業欄は「会社員」から退職後の野菜作りでは「無職」になりそうで、私の年では少し寂しいとモヤモヤしていました。そこで孫ができたのを機会に耕作を頼んでいた田の一部を戻して、作った米を自家消費しつつ余った米をJAに出荷することにしました。また杏やユーカリの苗を植えるなど

職業欄に「農業」と書けるよう「定年帰農」に力を入れています。

 今期の米は豊作、杏もそこそこ良い果実が実りました。野菜も作る種類が増え、手を掛けただけ美味しく育つ野菜や果実に驚きながら収穫の充実感を味わっています。初めて収穫した新米の味は格別です。

さて、地域特産の杏について少しお話します。私が住む千曲市森・倉科地区は松代藩が栽培を奨励したこともあり江戸時代から杏栽培が盛んです。4月には村が杏の花で埋まります。種類は平和、昭和、信州大実などが昔からの主流で、近年はハーコットなど甘くて生食で美味しい品種が増えています。杏の木は繊細

で何度かの消毒と剪定、施肥をしないと枝枯れや病気の果実になってしまいます。私もやっと良い果実が収穫できるようになりましたが、手ごたえがあると面白くなってくるので不思議です。千曲市は万葉集に東歌が載っている、いにしえから詩歌に詠われた土地柄です。杏の花の時期は村が花の匂いに包まれます。近く

に長野県立歴史館、森将軍塚古墳館もあるので、いにしえを思いながらお出かけください。因みに歴史館近くのあんずの里物産館のラーメンと森将軍塚古墳カレーは結構いけます。

 

《電 友 会》

 ひょんなことから電友会の「川柳でんでんむしの会」に入会して川柳を作り始めました。  最近頭を使うことが減り、言葉がすぐに出ないし語彙が減っているのを実感していたので、一念発起し6月からお世話になっています。篠原特別顧問、込山会長、田子幹事はじめ大先輩の皆様のご指導により、面白さが少し分かってきたところです。 毎日の様々な事柄、農作業、景色、庭の小鳥の声など触れるものが句にならないか考えるようになり、五感が磨かれる気がします。

 昨年は妻科神社の地口川柳に投句し有名な画家さんの絵が句に付いて灯篭になり、秋祭りの神社に飾られました。そして11月のいきいき作品展で展示することができました。六十の手習いで世界が広がっています。川柳に興味のある方は、ご一緒に如何でしょうか。参加をお待ちしております。

         一句「歳月のでき事が糧(かて)脳みがく」

 

《孫は可愛い》

長男一家に孫が生まれ正真正銘の爺さんになりました。東京暮らしなのでたまにしか会えませんが、技術の進歩は素晴らしい。携帯のアプリを使うと写真や動画を家族で共有しコメントも付けられます。お嫁さんがマメにアップしてくれるので成長がリアルタイムで見られます。見ながら目じりが下がり、よく聞く「自分の孫は可愛い」はこのことと分かりました。

電電公社に入社した時、将来何をやりたいかとの問いに「テレビ電話」と書いたことを覚えていますが、LINEなどを使えば付加料金なしに実現しています。

何と便利な世になったことか。これらを支える通信の仕事に携われたことに感謝しています。

横にそれましたが、これからの人生の潤いと張り合いが増えるのは有難いことです。

 

《地域デビュー》

 勤めを辞めて、自宅中心の生活になると地区外に出ていた私には様々な役が回ってきます。地区自警消防、祭典係などなど目白押しです。

そして育成会。今期副会長、来期会長で小中学生の地区行事を地域の皆さんと実施する役目ですが、地区の小学生の数を聞いて驚きました。六学年で百人に足りません。我々の頃は一学年に六十人ほどだったので、三分一以下です。人口減少を痛感します。当地区は御柱祭をやっていますがコロナ禍で1年延ばしました。

今年は子供たちが七年に一度のお祭りを経験ができれば良いなと思っています。

一句「御柱曳く子の声に村弾む」

 

《最近の感動》

 締めに最近心がときめいたことを書きます。小平奈緒さんが、信濃毎日新聞に連載されていますが、読むにつけ若いのに磨かれたその生き方や発言に感動しています。

子供の頃に目標を立てその実現のために大変な努力をして結果を出してきたことが文章から伺えます。そして大事にしている言葉として色紙に書く「与えられるものは有限、求めるものは無限」、他に「人から聞いて感度できる気持ちを持っていること」、などが印象に残っています。

私の同年代との会話は体の不調と薬、病院の話が多くなってきましたが、新たに踏み出す前向きな気持ちを持ち続けたいものです。小平さんを見習って、ウサギ年に新しい場所に飛び跳ね人生を広げたいと思います。 

 末筆ですが、皆様には良き一年を過ごされますようお祈り申し上げます。